政治を語ろう。JOEの私見


◆米大統領選「ブッシュ連投」

 ●2004年11月02日、アメリカで大統領選挙が行われた。共和党は現職のブッシュ大統領、民主党はケリー上院議員、無所属からネイダーが選出されたが、事実上はブッシュとケリーの一騎打ちであった。AP通信は5日、米大統領選で勝敗確定が遅れていたアイオワ州(選挙人7人)でブッシュ大統領が勝利したと改めて報じた。アイオワは2000年の前回選挙で民主党ゴア候補が4000票あまりの差で制していた。ブッシュ氏は今回、前回ゴア氏が勝ったニューメキシコ州でも勝利。一方ケリー氏は前回ブッシュ氏が勝ったニューハンプシャー州を制したが、それ以外は民主、共和両党がそれぞれ前回勝ったのと同じ州を獲得した。これで選挙人獲得総数はブッシュが286、ケリーが252人でブッシュの再選が確定した。
 今回の選挙の争点は、イラク戦争・テロ問題を含めた安全保障・経済問題等が主軸として捉えられていたが、戦争・テロ面では単純に分けると賛成・反対派に別れ、先制攻撃も容認する国内強化を訴えたブッシュと国連を交えた国際協調路線に近いケリーとに論評は真っ二つに別れたようだ。
 選挙が迫って来ると、多くのジャーナリストの論調は反戦運動の勢い強しと読んでか、途中経過をブッシュから国際協調イメージの強いケリー有利に変更しつつあった。実際に半年程前は私が見た番組もイラク戦争の矛盾と悲劇を伝えるものが多かった。そして、3回のテレビ討論でもブッシュは引き離され、海外のマスコミによる調査でもケリー支持の国が圧倒的に多く、私自信もケリーの勝利を感じ始めていた。
 ところが、接戦とはいえ結果は明確なブッシュ勝利となった。正直言ってこの結果には少なからずショックを受けた。私は公約通り融和路線を取ってくれることを前提にケリーの勝利を期待していた。ブッシュ政権ではアメリカの平和は守られるだろうが、世界を混迷に導くとしか思えなかったからだ。
 私は未だに9.11はパールハーバーに近いと思っている。ブッシュは流石にテロを事前に知っていたとは思えないが、同時多発テロを機にブッシュは「世界の警察アメリカ」という外政面を国外に示すチャンスを得た。ブッシュはそれまで国内向けの政策を強硬に押し通し、京都議定書、弾道弾迎撃ミサイル制限条約、核全面禁止条約等の国際協定から一歩的に離脱し、一国主義を貫こうとしていた。テロはこうしたユニラテラリズムに対する憎悪から生まれたと言っていいのではないか。そして、テロはアメリカにとって悲劇に留まらなかった。見当違いなフセインを攻撃することで、ブッシュは最初は考えていなかった「世界に向けてのアメリカ、世界のためのアメリカ」を誇示し始めたのだった。これからのブッシュが路線を変えない限り、テロは拡大してゆくだろう。アメリカ人は中東という地域以外にフセインとヴィン・ラディンの区別が何処までついているだろうか。自分達だけに向けられた「自由と正義」にアメリカは酔い始めている。これはテロリストの思う壺で新たな脅威を産み出しかねないことを国民は理解しているのだろうか・・。残念ながらパレスチナのアラファト議長の命も僅かである。宗教から生まれた戦火が刻々と世界に広まってゆく恐ろしさを感じてしまう。
 今更テロの不安を抱えるアメリカ国民を責めても始まらないだろう。だが、他国の人間である私が口を出すことではないが、未来に向けて、もっと選挙制度に関しては矛盾を解消するべきだと思う。マジョリティーからマイノリティー迄が公平に投票しているならば、出した結論を素直に受け入れることも出来るのだが、どうも見えないコントロールがあるようだ。
 私の疑問は州単位の「選挙人制度」による票の総取りであり、地域ごとに違う投票方式であり、更に登録しないと投票出来ない「選挙人登録者制度」である。最後の選挙人登録制度というのは、市民は州法に基づいて事前に選挙人登録をしなければ投票出来ないもので、一見不正行為をなくすように作られているが、有権者の登録手続きは州によって異なる上、都度選挙人登録をしなくてはならない。今回からは仮投票制度なるものを導入して、先に投票だけさせておいて後から選挙人として正統だったか調べるシステムで最終的に有効票としてカウントされるかどうか判然としないものである。実はブッシュは今回この制度を有効に取り扱ったと見られる。彼はまず自分の支持者たるべき人間に登録を徹底させていた。ところがマイノリティーの浮動票を集めようとしたケリーには徹底させるすべがなかった。浮動票は確かに増え、投票率は上がったが、それはケリーの追撃を懸念したブッシュの支持層が真面目に投票所に向かった駄目押しに過ぎなかった。
 ジャーナリスト小西克哉のレポート番組は大変面白く、一番納得がいく解説だった。彼の米大統領選の取材ではブッシュの勝利を「宗教と倫理」による決着と位置づけていた。まさにその通りだと思う。ブッシュの戦法は浮動票を捨て、徹底的に保守票を固めたことによる。今回の選挙ではサイレント・マジョリティーの宗教的右派の票を取りこぼし無く確実にまとめ上げ、これに加え本来はケリーに入るはずのカソリック票の55%が、彼の中絶容認政策によってプロテスタントのブッシュに流動したと言われている。実際にメガチャーチなる2万人もの信者を持つ巨大教会では、親が礼拝を受けている間に幼児達は教会内の快適な託児所で英才教育、いや宗教洗脳が行われている。教会の周囲には一切道標はなく、排他主義が貫かれており、日本人の私には恐ろしく異様な光景にしか映らなかった。その先に正しい未来が待ってるとはとても思えない。イスラム教だろうがキリスト教だろうが、原理主義というものは最大の災いの火種であることを感じずにはいられない。
 問題はこれを対岸の火事と黙っては見逃せないのが今の日本の立場だ。本来はどちらにも荷担することなく、被爆体験国としての平和論者にならなければならない立場の日本が、今はアメリカに巻き込まれている。しかも首相は自ら進んでその輪の中に入っていったのだから、手が付けられない。暴論を吐くとするなら、アングロサクソンの強さは肉食から来ているのだろうが、BSEを見れば判る通り、共食いは恐ろしい警告を発する病を産み出す。同類を食べなくとも哺乳類ばかりを食べ続けていれば、凶暴か狂暴になってゆくに決まっている。その狂暴さは宗教という中に見事に正当化されてしまった。キリストは嘆いているのではないだろうか。やがて、悲劇的な終末を迎える恐れを感じて・・。
 小泉首相、貴方が日本と世界の平和を望むなら、彼等に僅かなパンとワインを主食とするように勧めるか、せめて魚と野菜を食べて、少し頭を冷やしましょうと、言ってあげて下さい。いえ、結構真面目に言っているのですが・・。
(記載日 2004/11/06)





【RETURN 2004】