事件を留めよう。JOEの私見


瀋陽北朝鮮五人家族亡命失敗 (発生日 2002/05/08)

 ●事件というようりも、政治と言った方がいいのだろうか・・。また日本の不甲斐なさを露呈する事件が起こった。一見、日本には責任がないような事件だが、日本人官僚の悪しき体質を晒し出す事件である。

 2002年5月8日午後、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を脱出した男女計五人が、中国・遼寧省瀋陽の日本総領事館に亡命を求めて駆け込んだ。このうちの三人は中国公安当局に総領事館入り口付近で拘束され、二人は総領事館の査証(ビザ)申請窓口の待合室まで入ったが、追い掛けるように入ってきた中国の武装警官に連行、拘束された。

 この事件は日本でもその現実が映し出された。中国警察官が門扉の中にいる女性と幼児を拘束しようとしている報道写真がしっかりとニュースでも公表された。泣き叫ぶ母娘を余所に、日本の領事館員が手をこまねいている姿が映し出されていた。
 これに加え、領事館内が外交関係に関するウィーン条約により治外法権が認められているにも関わらず、武装した警官によって治外法権が侵され、逃げてきた二人を連れ去られるというお粗末を演じたことも判ってしまっていた。
 今回の事件は一部がビデオに収められて公表された。この家族は事前に韓国メディアに予告しており、その情報により待機していた韓国マスコミによってVTRによって撮影された。何かあった時は国際世論に訴えるつもりであったのだろう。
 この様に家族が対応していたのには、深刻な背景があった。この五人は昨年六月に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)北京事務所に駆け込み韓国に亡命したチャン・ギルス君の親類にあたる。家長が北朝鮮で政治的発言を理由に逮捕され、家族も監視される状況となったため1998年に中国に脱出した。
 亡命に失敗した5人は、チャン・キルスを祖父とする一族でキルスの母方祖父の妹で幼児の祖母のチョン・キョンソック(53歳)、幼児の父のキム・グァンチョル(28歳)、その弟で幼児の叔父のキム・ソングク(26歳)、幼児の母のリ・ソンヒ(26歳)、そして幼児のキム・ハンミ(2歳)と判明。
 詳細は今後判るだろうが、この5人は脱北しては捕らえられるということを繰り返し、かなりの期間ハルビン市の近郊に潜伏していたらしいが、妻が妊娠し5ケ月になったこともあり、昨年亡命に成功している上記チャン・ギルス君達の後を追って、他の親戚の2人を加えた合計7人で今回の亡命を企てたということらしい。米国の総領事館内に駆け込みした他の2人は、米国側の対応で亡命に成功している。

 中国では三月に北朝鮮住民25人が北京のスペイン大使館に駆け込み、フィリピン経由で韓国に亡命するなど、外国公館に北朝鮮住民が駆け込む事件が相次ぎ、中国政府が外国公館警備を強化するなど対応に腐心している最中だった。
 亡命劇には韓国のNGOが関与していたとされているが、韓国のメディアも動いていることから考えると、事前に予見が出来たことではなかったのだろうか?。今や中国への脱北希望者は数万人もいるに違いないということは、日本の外務省や公安当局が推察出来なかったというのはどういうことだろうか?。自分達のところにだけは火の粉は飛んでこないと、領事館の中でのうのうとしていたとしか思えない。現在の中国が表向きは笑顔で冷静に振る舞っているように見せていても、内情は国内統制だけで四苦八苦していることを感じ取れないわけがないだろう。それともすっかり官員は中国から美人計に出も填められていたのだろうか・・。

 後日、高橋邦夫駐中国公使が同日、中国外務省を訪れてこれを抗議、連行された人物の引き渡しを求めた。・・というが果たしてこの報道も実際は抗議までいったものだか、怪しい感じである。この後、小泉首相は「中国や北朝鮮の立場も有るのであまり刺激しないように慎重に対応するように外務省に指示しを出していたらしい。それは北朝鮮ではなく、中国に配慮したに過ぎない。ただ小泉氏は内政のために外交は捨てているのを知っているので、ここで総理批判までする気はないが、外務省の官僚達の危機意識の無さはどうなのだろうか?。
 日本の在外公館にこれだけの数の北朝鮮住民が亡命を求め公然と駆け込んだのは初めてで、中国の地方の外国公館に公然と亡命を求めたのも例がなかったことは事実の様だが、ことの全容が判ってくると過去に経験がなかったから、などとはとても言っておられない。


(記述日 2002/05/12)



 この後、5月13日に韓国がこの五人の受け容れを表明。五人は22日に中国を出国、マニラ経由で韓国へ。23日は5人は韓国の地を踏み、先に亡命していた親戚との合流を果たした。

 岡崎総領事ら2人更迭 阿南大使は厳重訓戒 瀋陽事件で外相発表
中国・瀋陽の亡命者連行事件で厳重訓戒となった阿南惟茂駐中国大使=4日夕、北京の人民大会堂(共同) 川口順子外相は四日夕、外務省で記者会見し、中国・瀋陽の亡命者連行事件で、緊急事態への危機意識が希薄で対応に不備があったとして、岡崎清瀋陽総領事を減給処分の上、西山厚首席領事とともに帰国命令を出し更迭するなど、関係者十三人の処分を発表した。阿南惟茂駐中国大使は厳重訓戒とし、給与の20%を一カ月自主返納。外相も20%を一カ月自主返納する。  事件を踏まえ、(1)警備強化の五カ年計画の策定(2)本省に危機管理官を創設―などの改善策もまとめた。

 中国が批判を避けて、亡命者を解放したのだろう。しかし、この間に起こした官僚達の行動や発言にはもうコメントを寄せる気分にもならない。そして処分までの時間も内容も悠長なものである。
(記述日 2002/07/04)





【RETURN 2002】