|
◆歌舞伎町一丁目雑居ビル火災(発生日 2001/09/01) ●平成13年09月01日、0時58分ころ、東京都新宿区歌舞伎町1の雑居ビル「明星56ビル」(地上5階、地下2階)3階マージャンゲーム店「一休」のエレベーターホール付近で爆発があり、同店と4階飲食店「スーパールーズ」の各80平方メートルが全焼、約5時間40分後に鎮火した。 私の住まいから5分とかからないところである。この日、私はいつもの仲間と麻雀を興じていた。その場所からもけたたましい消防車の音は耳に届いていた。基本的には飲み屋であるその店では、何人もの客がその音の大きさと多さと永さにただならぬ気配を感じて表に飛び出して行った。帰って来た見物人達は口々に野次馬の多さで、状況がよく判らなかったとぼやいていた。 ただ相当な煙が出ていたこと、かなりの消防車が出ていて、縄が広範囲に張られていたことで、かなり悲惨な事態に陥っていることを感じていたようだった。残念ながら店にはテレビもラジオもなかった。本当にその悲劇を私が知ったのは翌日以降の報道からだった。 3階の麻雀ゲーム店には客と従業員が19名いて、そのうち3名が負傷しながらも脱出したが、16名が死亡、4階の風俗店には客と従業員28名がいたが、全員が死亡した。逃げ遅れて死亡した男性は32名・女性は12名で、全身やけどか一酸化炭素中毒などが原因で亡くなった。 警察庁によると、72年5月の大阪・千日デパートビル火災(死者118人)などに次ぎ、死者数で82年2月の東京・ホテルニュージャパン火災(同33人)を上回る戦後5番目の大惨事となった。皮肉にもこの日は防災の日であった。 出火の原因ははっきりとしたことが判明していなかった。ガスメーターが加熱により落脱したとか、誰かが放火して犯人が窓から逃げたとか、判然としない。 9月1日、午前1時1分、4階の店から女性の声で「歌舞伎町なんですけど、火事みたいで煙が凄いんですよ、歌舞伎町一番街のスーパールーズです。早くきてください、出られない、助けて」と119番への通報があったことが判った。その後も3回に渡る要請があったが、残念ながら間に合うことは出来なかった。何とも言えない無常観が襲う。 多数の犠牲者が出た理由として、(1)ビルが細長く、屋内階段が1カ所しかなかった。(2)火元が荷物を積み重ねた階段のそばで逃げづらかった。(3)階段にはロッカーも多数あり、消防隊の活動の妨げになった。(4)3・4階の階段の防火扉が開きっ放しで、煙の蔓延が速かった。(5)消防庁から再三に防火の改善要求があったが、殆ど改善されていなかった。 だが、新宿に住む自分にはよく理解出来る状況である。歌舞伎町内の裏路地を私も器用に利用することが出来るが、残念ながらゴミバケツの山と腐臭に包まれており、ネズミ以外の逃げ道などにはなっていない。建物の外もそうなので、古いビルは屋内も火災が起こる等と想定すらしていないだろう。階段に積まれた段ボールや発砲スチロールの箱などの山は見慣れた光景に成りすぎてしまっていた。出火原因に関しては警視庁のHPの「事件ファイル・捜査にご協力を」に掲げられているが、どうみてもこのページは殺人者が対象なので、恐らく警察は犯罪と睨んでいるのだろう。放火または爆発を起こした犯人がいたとしても、この事件は人災である。 喚起・避難通路・消化器、これらが基準を満たしていれば多少はチャンスがあったかも知れない。恐らく全員が助かることが出来なくても、もう何人かの命は助かったかも知れない。考えただけでもがっかりである。私の知り合いがスーパーの客で姉妹で働いていた妹が亡くなり「いい子だった。癒されていた」と電話口で泣いていた。テレビでもそんな客のインタービューが映されていた。新宿に昔から住んでいる私には風俗系で働いている子達の方がよっぽど純粋だったり、しっかり夢を持ってることを知っている。飯を喰うためにきっと一生懸命に働いていた子達に違いない。 そう今の新宿で一番怖いのはボッタクリ店でもヤクザでもなく、多分逃げ道のない閉ざされた空間だろう。財布の中身を気にするよりも、まずは避難路を確認してから遊ぶことにして欲しい。 (記述日 2001/10/10) |