MY FAVORITE MUSIC
ギブス




桜の花の咲く頃、思春期を越えた頃から偏頭痛に悩んでいた。
年々良くなってきているが、いつ来るかと怯えた時もあった。
その為ばかりでなく、春は余り好きではなかった。
空の青さと心の蒼さのギャップが大き過ぎ、暗くなり、嫌になる。
一番厭世観に襲われる季節だ。
だが、3年前からそれが少し変わってきた。
ひとつの歌に救われている。

ニルバーナのカート・コバーンは4月5日に自殺した。
こよなく愛してる歌の中に「ギブス」がある。
林檎は歌う。
“また四月が来たよ。同じ日のことを思い出して・・”
俺はジャンキーではないが、なんとなく奴も同類の様な
気がしている。勝手な推測でしかないが・・。

前に付き合っていた彼女がカメラを向けた俺に言った。
「写真は嫌い、そのままだから残酷」
“だって写真になっちゃえばあたしが古くなるじゃない”
ファインダーから目を逸らして、歌のことを思い出した。
「林檎の詞は凄いな」と呟くと、彼女が言う。
「大したことないよ。わたしのがもっと凄いの書いてた」
俺は彼女を少し嫌いになり、更に好きになった。
あの四月から毎年CDにリピートを掛けて、
歌詞にボロボロに打ちのめされるを楽しみながら、
春を乗り越える術を覚えた・・。


その年、年頭から仕事と人と時間に追われていた俺は夏に倒れた。
彼女は毎日病院に来てくれた。一日もかかさずに・・

秋になって彼女がそうっと遠ざかったのを感じた。
「有り難う」とメールで送ったが心は別れ切れていなかった。
今更、会った時に「もう一度とは・・」求められない。

“あなたはすぐにいじけて見せたがる”                    ・・と言われそうで。


記:2003年3月27日(木)  






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