罪と罰

小学生編1


 やくざ者ではない。刑務所に入ったこともない。だが相当な「ろくでなし」ではある。
 人前で見せている顔や言葉よりも心の闇は深く持っている。
 そんな私だが、少しは人のために役に立つ人間になっているかも知れない。
 何故ならこれらは全て自分でした体験だから。
 私でよければ貴方の苦悩の聞き役、助言師になろう。


■小学校2年生頃・グローブ
 母が鹿児島の出身であるため、小学校の夏休みは隔年で市内の叔母の家に預けれられていた。そこで全く記憶に残っていない悪事が発覚した。小学校6年の夏だっただろうか。鹿児島市内の家の前で、自分より小さい小学校低学年の男の子にいきなり指をさされ罵られた。「オマエのことは覚えているぞ。オマエは僕がもっとちいさかった時、僕のグローブを自分のものだと言い張って騙し盗ったんだ!」。日に焼けた闊達そうな男の子は凄まじい恨みの表情で私を睨んでいた。「周りの大人に言い張って、僕からグローブを盗んだんだ。オマエは泥棒だ!」子供の顔とは思えない迫力に私は呆然となった。後から叔母に尋ねた。本当に私はそんなことをしたのかと・・。叔母は小さい時の事だから、よく判らなかったのよ、と言った。その言葉はショックだった。私はうすうす自分の中に暗い沼があることに気が付いていたが、それを晒されたのだった。やはりオマエには犯罪者の素質があるのだと・・。

【判決;有 罪 懲罰;誹 謗


■小学校3年生頃・アトムシール
 当時、テレビでは「鉄腕アトム」が大人気だった。ご多分にもれず私もアトムのファンになっていた。漫画もよく本屋で立ち読みした。漫画の本自体が欲しいと思ってはいなかったらしいのだが、付録になっていた美しいアトムやロボット達が描かれた細いシールがどうしても欲しくなった。別に家に帰れば母から小遣いをもらえたのだろうが、一人っ子の私には我慢の二文字が全くなかったようだ。人生で初めて爆発しろうな心臓を感じながらも、私は数十分も小さな本屋の中をうろつき、遂にシールを抜き取って家に帰った。人生初でおそらく最後の万引きだろう。欲しい物は手に入れたが、もうあの緊張感は二度と味わいたくはない。しかし、その後シールの記憶は全くない。

【判決;有 罪 懲罰;緊 張


■小学校4年生・トランシーバー
 一人っ子で鍵っ子であったにも関わらず、私の父は相当に厳格だった。悪戯や過ちを犯するとぶん殴られた。だから殴られると本当に目から星が出るということを知っている。それは愛の鞭だっただろうか?。いや、オヤジは卑怯な親だった。故意ではなくても、悪さをしなくても私のうっかりにも制裁を加え続けた。あの男が私に対して本当の愛がないことは早くから見破っていた。気付いた当時から心に歪みが出てきた。私は腹いせに母親の財布から金を抜いた。当時人気だった高額なトランシーバーを手に入れ、せめて学校で人気者になろうとした。何度も繰り返しているうちにお袋が遂にオヤジに告白した。その時オヤジは私を殴らなかった。あいつは9歳の私を人間として冷ややかに見下した。

【判決;有 罪 懲罰;蔑 視


■小学校5年生・鉛筆の芯
 事の発端は覚えていない。だが、多分悪いのは私だったと思う。当時はまだ誰もが裕福な時代ではなかったが、それでも私の家は土地を買い取ったぐらいだからまだよかったのだろう。近所のボロボロのアパートに住む同級生を私は心の何処かできっと見下していたのだ。そして強い相手に言うことが出来ず、その妹に私は蔑みの言葉を投げてしまったのだろう。「妹に謝れ」と同級生は俺に迫った。俺は怖くなって持っていた鉛筆をそいつの太股に刺して逃げた。そいつはその後何年もそのことを言わなかったが、中学校になったある日、奴は俺に太股を見せて「オマエが刺した鉛筆の芯がほら此処に残っているのが見えるだろう」と言った。その言葉の後に「オマエは戦う勇気もない男なんだ」と聞こえない声がした。

【判決;有 罪 懲罰;憐 憫



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